グレーゾーンや発達障害が理由で退園・転園?その前にできること、考えたいこと

保育園の先生に「発達のことで気になることが…」と言われたとき。
そのひと言に、戸惑い・ショック・不安──いろんな気持ちが一気に押し寄せるかもしれません。
私も一人の親として、その気持ちはよくわかります。

でも、保育士として何人もの子どもと関わってきた中で伝えたいのは、
「早く気づいて動くことが、子どもの笑顔・未来を守ることに繋がる」ということ。
この記事では、その”“はじめの一歩””を、一緒に考えていきたいと思います。

なぜ発達のことで保育園から声がかかるの?

保育士
保育士

「〇〇ちゃんの発達で気になあることがあります」

「お家ではどうですか?」

「一度専門機関にかかりませんか?」または「発達検査を受けませんか?」

保育園で過ごしていると、ある日突然こんな風に声をかけられることがあるかもしれません。

親にとっては、「うちの子、何かおかしいってこと?」と戸惑いや不安、時には否定したくなる気持ちが湧いてくるのも当然です。
ですが、こうしたお声がけは、決して「困った子だから」とか「排除したい」という理由でなされるものではありません。

保育園という集団生活の場では、同年代の子どもたちが一緒に過ごすため、”気になる子”を発見しやすい場所です。

そして保育士は””子どもの発達のプロ””でもあります。「気になる点があったら早めに伝える」ことは、保育士の大切な業務のひとつです。

保育園では何を見て「気になる」と感じるのか

保育園では、子どもたち一人ひとりの姿を、日々の生活や集団の中で丁寧に見守っています。
そのなかで、年齢相応の発達や、集団の中での振る舞い、身の回りのことの習得状況などを見て、「この部分が少し気になるな」と感じることがあります。

例えば:

  • 周囲の子と比べて、言葉の理解や発語が大きく遅れている
  • 特定のこだわりが強く、活動の切り替えが極端に難しい
  • 保育士の声掛けが入りづらい、視線が合いにくい
  • 周囲と関わることが極端に少なく、集団遊びに入れない(主に年少以上から、ひとり遊びも未満児のうちは大切な発達の過程です)
  • 落ち着きがない、逆に過集中で周囲の様子に全く気づかない
  • 激しい癇癪を頻繁に起こす

こうした様子が、「その子らしさ」として自然な範囲にあるのか、それとも「サポートが必要なサイン」なのかはとても見極めが難しい部分です。
だからこそ、一度や二度の観察で判断するのではなく、保育士は一定期間かけて慎重に様子を見ながら、複数の職員間でも話し合うことが一般的です。

「気になる」と言われた=すぐに「発達障がい」と決まるわけではありません。そして保育士は医師ではないので、診断はできません。
まずは、子どもがもっと過ごしやすくなる方法を一緒に探す”はじめの一歩”として、保育士が声をかけている——そんなふうに捉えてみてもよいかもしれません。

先生たちが伝えるときに、どれくらい悩んでいるか

保育士が「発達のことでお話があります」と声をかけるとき、実はその前に相当な葛藤と話し合いを重ねています。

なぜなら、発達に関する指摘は、保護者の心に深く影響することを、保育士自身もよくわかっているからです。
「どう伝えれば受け止めてもらえるだろう…」「言ったことで関係が壊れてしまわないだろうか…」と悩み、何度も言葉を選び直したり、上司と相談を重ねる姿が現場にはよくある光景です。

また、伝えるタイミング、言葉のニュアンス、表情や声のトーンにまで気を配り、“その子のために伝えることが必要”と覚悟を持って話している保育士も多いです。

発達支援や特性の理解は保護者と園が一緒に取り組んでいくべきものですが、
その一歩を踏み出すきっかけとして、保育士がプロ目線から伝える責任を担っていることも、ぜひ知っていただけたらと思います。

「発達が遅い」と言われたとき、親が感じること

「そんなはずない」と思うのは自然なこと

保育士
保育士

「発達の様子が気になります。

少しゆっくりめかもしれませんね」

このように保育園で伝えられたとき、最初に抱く気持ちは人それぞれですが、多くの保護者に共通しているのは「そんなはずない」「うちの子に限って」と思うことでしょう。
我が子の未来や笑顔を大切に思うからこそ、受け止めづらいですよね。

特に、園での様子と家庭での様子が違う場合、「家ではそんなことないのに…」と感じ、納得しづらいのも無理はありません。大切なのは、親として否定的な感情を持った自分を責めないこと。そして、少しだけ立ち止まって、目の前の子どもにとってどんな支え方ができるかを考えてみることです。

「じゃあ、どうしたらいいの?」という不安に寄り添う

発達に関する話をされたとき、多くの保護者がぶつかるのは「じゃあどうしたらいいの?」という壁です。
発達の指摘は、単に“できないことを言われた”のではなく、“この先どうなるんだろう”という将来への不安につながることが多いです。

そんな時、ひとりで悩まずに、まずは保育園の先生に率直に思いをぶつけてみてほしいです。
「気になることがあったら相談をする、ひとりで子育てをする必要はない」──そう考え、支援の一歩を踏み出すことが、子どもの未来の安心にもつながっています。

実際にあった退園の話から学んだこと

事例

以前、私が担任していた未満児クラスに、特性があるお子さんがいました。

  • 特定のおもちゃへのこだわり
  • 目が合わない
  • 活動から活動への切り替えが難しい
  • 思うようにならないと、激しく癇癪を起こす
  • 好きなものに対しては年齢不相応なことまでわかるので、妙に頭が良いと感じる
  • 保育士の話が入らない

ずっと職員間で気になってはいましたが、発達のことには触れぬまま、年少クラスに進級しました。初めての参加日の日保護者と一緒に登園したものの、普段の保育園の様子との違いから教室に入ることができず、パニック状態になってしまいました。
その後、園とご家庭で話し合いを重ねましたが、お子さんの様子への親御さんのショックが大きく、””退園””という結果になってしまいました。

この経験から、「もっと早くから園とご家庭が丁寧に連携できていれば、別の道(退園しない選択肢)もあったのでは」「もう少し小出しにできていたら…」と感じ、私の痛い教訓の1つになっています。

”誰が悪かった”というのではなく、「支援を始めるタイミングが早ければ…」「親御さんへの対応ももっと丁寧にできていれば…」時々そのお子さんのことを思い返します。

気づいた今こそ、大きな一歩を踏み出すとき

発達検査=「診断」ではない

保育園や保健センター、あるいは小児科などから「一度、発達検査を受けてみませんか」と提案されると、
「うちの子に障がいがあると言われているのかな…」とショックを受けてしまうことがあります。

でも、ここでまず知っておいてほしいのは、発達検査=診断ではないということ。
発達検査はあくまで、子どもの得意・不得意の傾向や、現時点での発達の様子を客観的に知るための手段です。

また、実際に「発達障害」と診断を下せるのは医師のみであり、園や保健センターが診断を行うことはありません。
そのため、検査を受けたからといって即座に「障がいがある」と決まるわけではないのです。

むしろ、早めに子どもの特性を理解することで、「今の困りごとにどう対応していけばよいか」という具体的なヒントが見えてきます。
“診断を受けるかどうか”よりも、“子どもが今、何に困っていて、どんな環境や関わり方が合うのか”を知ることが、何より大切な一歩です。

家庭でもできる「ほんの少しのサポート」が未来をつくる

専門機関とつながっても「療育はいっぱい」「検査の予約も何ヶ月も先」とすぐにことが進まないこ状況もめずらしくありません。そんな時でも、家庭でできる簡単なことを紹介します。
たとえば――

  • 声かけをゆっくり・短くする
  • 指示を簡潔にわかりやすくする(視覚優位・聴覚優位など、お子さんに合わせてカードやタイマー、文字で書くなども有効です)
  • できたことはすかさず褒める(具体的に)
  • スキンシップをとる
  • 名前を呼び、目が合ってから話す

特別な知識がなくても、子どもにとって「わかりやすくて安心できる環境」を家庭でもつくることはできます。
それが保育園と連動すると、子どもの安心感はぐっと高まります。

退園・転園の前に、立ち止まって考えたいこと

保護者にとって、わが子が「発達に遅れがあるかもしれない」「凸凹があるかもしれない」と伝えられるのは、大きな衝撃です。それを告げられた時、

パパ・ママ
パパ・ママ

「この園では合わないのでは?」

「もっと理解のある場所を探したほうがいいかも」

「保育士の関わり方が良くないのでは?」

と悩み、退園や転園を検討する方も少なくありません。

もちろん、環境を変えることがすべて悪いわけではありません。
けれども、その前に少しだけ立ち止まってほしいのです。

  • 保育士と率直に気持ちを話し合えていますか?
  • 一方的に「こうしてください」と言われていませんか?
  • お互いに遠慮し合って、本音を出せずにいませんか?

園との関係が築けていないと、支援の道筋も見えにくくなります。
退園や転園を考えるならその前に思い切って、本音をぶつけてみてほしいです。もしかしたら理解者が出てきたり、我が子にとっての良い支援の道が見えてくるかもしれません。
その後、例え転園になっても、より納得のいくものになるはずです。

退園や転園は、発達課題のある子にとってはとっても大きな変化になります。
今通園している園で、まずは出来ることがないか探ってみてほしいです。

子どもにとって必要なのは“環境”だけじゃない──関わり方という支援もある

もう一つ退園を選択する前に重要な視点があります。「本当に必要なのは“環境”の変更なのか?」ということです。

もちろん、場所を変えることで子どもが伸び伸び過ごせるようになることもあります。でもそれと同じくらい──ときにはそれ以上に大切なのが、「その子に合った関わり方」を見つけていくことです。

たとえば、保育園の先生と保護者が日々の様子を共有し、「どう接したら安心できるのか」「苦手な場面ではどんなサポートが有効か」といった視点を持つだけでも、子どもにとっての安心感はぐっと増します。

「わかってもらえている」という感覚は、子どもにとって大きな力になります。環境がガラリと変わらなくても、大人たちのまなざしや関わり方が変わることで、日常の中に小さな成功体験や安心が増えていくのです。

転園や退園という選択肢が“ゼロ”というわけではありません。でも、その前に「どこに通うか」ではなく、「どう関わるか」という視点は難易度の低い、子どもに負担のない変化であることも忘れずにいてほしい視点です。

対応が早ければ、子どもはもっと笑顔になれる──二次障害を防ぐために

発達の特性に気づくのが遅れたことで、子どもが「できない」「わかってもらえない」と感じる時間が長くなってしまうことがあります。そうした状況が続くと、自己肯定感が下がったり、周囲との関係に自信を失ったりする「二次障害」につながります。学童期以降、不登校等につながる可能性も高くなります。

特性そのものが問題なのではなく、「困りごとをどう受け止められたか」「周囲がどう関わったか」が、子どもの心の土台に大きく影響します。

だからこそ、早めに気づいてあげること、そして、環境や関わり方をほんの少し変えてみることが大切です。
それだけで、子どもが「わかってもらえた」と感じ、少しずつ安心して過ごせるようになります。

これは”“診断を急ごう””という話ではありません。
子どもの特性を捉え、共有することで、目の前の子どもの表情に「笑顔が増えてきたな」「落ち着いてきたな」と感じることができたら、それが一番の手応えです。

どんなサポートも、「今、この子にとって何が必要か」を丁寧に見つめるところから始まります。

まとめ「“気づいてあげること”は、責めることではない」──子どもに寄り添うスタートライン

発達のことに限らず、子育てには「悩むタイミング」が必ずやってきます。
でも、何かに気づいたとき、それは「この子とちゃんと向き合いたい」と思っている証でもあります。

決して、自分や子どもを責める必要はありません。

発達の特性があるかもしれない、そう思ったときに必要なのは、「理解」と「支え」です。
それは、家庭の中だけで完結させなくていいもの。保育園や専門機関と協力しながら、ひとつずつ階段を上るように支援を探していければいいのです。

今、あなたが感じている戸惑いや不安は、すべて「子どもを思う気持ち」から生まれているもの。
その気持ちを土台に、焦らず、ひとつずつ。
笑顔が少しでも増えるように、一緒に歩いていけますように。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
もしご感想や質問があれば、ぜひコメントやメッセージでお知らせくださいね。

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