
「あの先生の言い方きついなあ…」
「子どもはかわいいけど、先生たちとの関係に悩むなあ」
「正直もう限界かも…」
保育の現場では、子どもや保護者対応以上に人間関係に悩む場面も少なくありませんよね。
女の人が多い職場、年齢層の違い、経験年数の差…。
誰もが一度は「辞めたい」と思うような壁にぶつかるものです。
「保育士は女性の多い職場で、人間関係が大変」とよく言われますが、実際に現場で働いていると、その言葉を痛感する場面が多々あります。
ただ、「人間関係がきつい」と一言で片づけてしまうのではなく、その背景にある“構造”を理解することで、見え方や向き合い方が変わることもあるのです。
ここでは、保育士ならではの人間関係が難しくなりがちな理由を、私なりの考えも交えて整理していきます。

保育園は、20代前半の若手から、子育てがひと段落したベテラン保育士まで、幅広い年齢層の職員が同じチームで働く職場です。
そのため、保育に対する考え方や価値観、仕事の進め方が人により大きく異なることも多く、すれ違いや衝突が生まれやすくなります。
たとえば…
- 「若い先生が勝手にこんなことしてた!普通はこうするもんだよね?」と年上の先生がモヤモヤ
- 「前の園ではこうしてたのに…」と異動してきた先生が戸惑う
- 「あの先生は時間になるとすぐに帰るなあ…きちんと終わらせて帰らないから次の日の保育がうまくいかないんだ!」一緒に組んでいる保育士と考え方が合わず「私ばっかり!」と不公平感が募る
私自身も、中堅と言われる年齢になりますが、これまでこうした現場の光景を何度も見てきました。
若手の気持ちも、ベテランの思いも、どちらも痛いほどよくわかります。
きっと、あなたのまわりでも、こうした場面を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

子どもや保護者への対応は、感情や気力を多く使う仕事です。
それに加えて、自分自身の体調や家庭のこと、園での業務…と、常にマルチタスクで動いている保育士は、気づかぬうちに心がすり減ってしまうこともあります。
とくに、慢性的な人手不足の現場では、その負担がより一層重くのしかかります。

「私は気動きしているのに、○○先生は全然気づいてくれない…」
「なんでいつも私ばっかり…」
と、知らず知らずのうちに不満やモヤモヤがたまりやすくなるのです。
こうした状況は、保育士個人の責任ではなく、園の体制や人員配置など、環境的な要因が大きいのも事実です。
にもかかわらず、現場に立つ保育士が責任やストレスを背負い込みやすくなる――それが、人間関係の悪循環を引き起こす背景にあるのです。

保育の仕事は、製品を作るように「同じ部品を、何時までに何個仕上げる」といった明確な正解がある仕事ではありません。
もちろん「安全を守る」「子どもの発達を支える」といった大きな目標や方針はありますが、それを“どう達成するか”には、さまざまなやり方があります。
たとえば…
- 「午睡の声かけのコツ」
- 「子どもが泣いているとき、まずどう関わるか」
- ”衛生概念の許容範囲”が人によりマチマチ
こうした細かい場面対応に、明確なマニュアルがあるわけではなく、多くは保育士一人ひとりの経験や価値観、直感で動いています。
だからこそ、

「それ、ちょっと違うと思う」
「私はこうした方がいいと思う」
…そんな風に、正解がはっきりしない中で意見が食い違い、摩擦が生まれやすくなるのです。
しかも、子どもに関わる、命を預かる仕事だからこそ、1つのミスが子どもの不利益につながるという意識が強く、その真剣さゆえに、ちょっとした意見の違いが、冷たい空気や険悪な雰囲気を生んでしまうこともあります。
「誰が悪い」という問題ではなく、保育という“正解の見えにくい仕事”だからこそ、ぶつかることがある。
そう理解するだけでも、少し気持ちが軽くなるのではないでしょうか。

保育士の人間関係がきついのは、決して「あなたのせい」ではありません。
でも、だからといって「どうせ何をしても無理」と思い込んでしまうのはもったいない。実は、自分の視点をほんの少し変えるだけで、人間関係が動き出すこともあるんです。
ここでは、実際に現場で働く中で私自身が効果を感じた「人間関係をラクにする工夫」をご紹介します。
ポイントは、「相手を変えよう」とするのではなく、「自分の言動や関わり方を見直す」こと。自分を責める必要はまったくありませんが、”自分から働きかける余地がある”と気づくことで、今まで見えていなかった選択肢が見えてくるはずです。
「それは理想論だよ」と思うかもしれません。
でも実際に、長く働き続けている人たちは、少なからずこの視点を持っていることが多いのです。
次の章では、具体的にどんな工夫ができるのかをお伝えします。

保育園の現場では、毎日慌ただしく過ぎていく中で、保育士同士のコミュニケーションが「業務連絡だけ」になってしまうことも少なくありません。
でも、ふとした雑談や、やりとりの中でこそ、「この人となら安心して仕事ができる」「困った時に助けてもらえる」という信頼関係が育まれていきます。
たとえば──
- 「昨日こんな失敗しちゃってさ〜」と自分の弱みを少しさらけ出してみる
- 「今日は調子悪そうだけど大丈夫?」と声をかけてみる
- 「今の〇〇先生のアイディアいいね!」「〇〇先生って前から思ってたけど、字が綺麗でいいよね」相手を認める、ポジティブな言葉を掛けてみる
そういった温かいやりとりが重なっていくと、「いざって時頼れる先生だな」「お互い様だよね」という空気が生まれてきます。
もちろん、いつも笑顔でいる必要はありません。でも、ほんの少しだけでも自分の心を開いて会話することが、働きやすい人間関係の第一歩になります。

人間関係のすれ違いは、たいてい「自分の視点だけ」で見てしまうことから生まれます。
「なんであの先生、あんな言い方をするの?」「どうしてこんな行動をとるの?」
そう思ってしまうのは、相手の立場や背景を知らないからこその“誤解”かもしれません。
でも、視点を少し変えてみるだけで、見えてくるものがあります。
私もかつて、若手の頃に先輩から言われた言葉の数々を当時は

「そのくらい別にいいじゃん」
「私ばかり注意されてる?私のこと気に入らないのかな?
と、モヤモヤすることもありました。けれど今、自分が年齢を重ね、注意する側に立つ場面も増えてきて思うのです。

「あの人にはあの人なりの考えがあったんだな」
「実は、あの時すごくプレッシャーを感じていたのかもしれない」
「あの時の先輩は子どものため、未来の私のために、本気で伝えてくれていたんだ。」
そんなふうに思えます。
ベテランでも若手でも、相手が今どんな状況にいて、どんな思いでその言動をとっているのか。
少しでも想像してみることが、人間関係のすれ違いを和らげるきっかけになります。

保育士はチームで働く仕事。できれば、みんなとうまくやっていきたい──そう思うのは自然なことです。
でも、どれだけ努力しても、価値観が合わなかったり、波長が合わない人はいます。
どんな職場でも、「合う人・合わない人」は必ずいますし、全員に好かれる必要はありません。
私自身、合わない相手とも「仕事上のチームワークが保たれていればOK」と思えるようになって、気持ちがずいぶん楽になりました。
仕事としての最低限のやりとりや報連相ができていれば、それ以上を無理に目指さなくても大丈夫。
努力をしたうえで上で、それでも合わない人がいたとしても“誰かに好かれない=あなたの価値が決まるもの”ではありません。
自分を守るために、「無理に好かれようとしない」勇気も大切です。

保育の現場で長く働いていると、自然と「経験」が蓄積されていきます。
それ自体はもちろん大切な財産ですし、自信につながることもあります。
でもその一方で、「私が新人の頃は…」「普通はこうする!」といった”自分のやり方が良い”という考えに固執してしまうと、新しい価値観や柔軟な対応を受け入れづらくなってしまうこともあります。
とくに保育の世界は、時代とともに変化しています。
たとえば、かつては当たり前だった関わり方が、今では“不適切保育”とされることもありますよね。
最近上司に口酸っぱく言われるのは「不適切保育の入口ハードルは思ったよりすごく低い!気をつけて」と…。
”保育は日々変わる” ”自分が知らないことを若手の先生は養成校で学んできてる” ことを知り

「若手の先生のやり方、意外といいな」
「自分も試してみよう、真似させてもらおう!」
と柔軟に受け止める姿勢が、良い関係づくりにつながります。
そして自分自身をアップデートし続ける姿勢は、若手にも安心感を与え、信頼される存在へとつながっていきます。

保育の仕事は、人と人との関わりの中で成り立っています。
だからこそ、職場の人とも自然と仲良くなって、仕事のあとにご飯へ行ったり、休日に一緒に出かけたりすることもあるかもしれません。
私自身も、かつて同僚とプライベートでも深く関わっていた時期がありました。
でも、そこでちょっとした誤解や人間関係のトラブルが起きてしまったことがあって――
「仕事で言うべきことを言えなくなる」「プライベートで言われたことを仕事に持ち込んでしまう」そんな悪循環に陥ってしまったんです。
もちろん、プライベートでの交流を全否定するわけではありません。
ただ、「職場での仕事時間」と「自分の時間」をしっかり切り分けて持つことは、心の余裕にもつながります。
だから私は今、「仕事の関係者とは外で会わない、園を一歩出たら仕事のことを考えない」を自分なりのルールにしています。時間外や休日のLINEや電話のやりとりも、必要最低限にとどめるようになりました。仕事とプライベートを分けることで、お互いに程よい距離感を保ちやすくなり、休みの日はリフレッシュすることでまた明日から頑張ろう!と気持ちを切り替えられています。

仕事の悩みや不満を誰かに話したくなることって、ありますよね。つい同僚と話しながら「◯◯先生さあ…」なんて陰口を言ってしまった経験、私にもあります。
けれど、その言葉が本人の耳に入り、

「あなたのことを信頼していたからこそ言うけど、とても悲しかった。」
と直接指摘されたことがありました。思い出すだけで胸が痛くなる出来事です。ただしんどく吐き出したかっただけでしたが、言われた側の立場に立つと、申し訳なさでいっぱいになりました。
この言ってしまった相手には謝罪をし、今は大人として上手に付き合ってますが、当初はすごく気まずくなってしまい「一時の気持ちのスッキリと引き換えに、自らの首を絞めてしまった」とつくづく思いましたし、「陰口では、何も解決しない」と痛感しました。
それからは、不満や気になることがあれば、なるべく本人に直接、冷静に、伝える努力をしています。もちろん、すぐには言えないこともあります。でも、陰で言うのではなく、「こう思っているよ」と伝える勇気を少しずつ持つようになりました。
対話には勇気がいります。でも、陰口には何の解決策もありません。対話の積み重ねこそが、信頼関係を築く一歩になるのだと思います。

「努力しても、どうにもならない」
そう感じるほどに、人間関係がつらいとき。
頑張り屋さんほど、「自分が変わらなきゃ」と自分を責めがちですが、すべての責任を背負う必要はありません。
保育園は数えきれないほどあります。
どんなに頑張っても、価値観がまったく合わない職場もあります。
無理をして心や体を壊してしまっては、元も子もありません。
もし今、毎朝出勤するのがつらくてたまらないのなら、
転職や異動といった「環境を変える」ことも立派な選択肢です。
私はこれまでに2度転職を経験しましたが(1度は職場が合わなくて逃げ出した、2度目は子育てとの両立を考えて)
職場の雰囲気や人間関係、働き方の文化は、園によって驚くほど違いました。
「転職=逃げ」ではなく、
「よりよい環境で力を発揮するための一歩」と考えていいのだと思います。
もちろん、どんな職場にも大変なことはありますが、
少なくとも「この職場ならやっていけそう」と思える環境は、きっと見つかります。

保育の仕事は、子どもと向き合うやりがいのある仕事である一方で、
人間関係の悩みを抱えやすい職場でもあります。
年齢や経験の差、考え方の違い、余裕のなさ、そして“正解のない仕事”だからこそ生まれるすれ違い…。
すぐに解決できるものばかりではありません。
けれど、自分の関わり方や考え方を少しだけ変えてみることで、
人との距離がふっと近くなったり、心が軽くなることもあります。
「すべてを我慢する」のでも「相手を変える」のでもなく、
「自身ができる工夫を積み重ねていく」こと。
それでもつらいときには、環境を変えるという選択肢も持っていいのです。
あなたが、安心して笑顔で働ける場所がきっと見つかりますように。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
転職体験をもっと聞きたい、保育の仕事での悩みを聞いてほしい等ありましたら、お気軽にコメントやメッセージを下さい。
お待ちしています。
至福の一杯を♪バリスタ